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樹木の話

日本には昔から「八百万の神」というように、さまざまなものの中に「神」という神聖な存在を見出し、大切にして来ました。
神社には「鎮守の森」といわれる森林があり、ご神木があったり、森・山がご神体になっている場合もあります。
そのように、「樹木」に不思議な力を感じるのは日本人だけでは無いようで、世界中に「樹木」に関する神話や伝説が残っています。

そんな「樹木の話」をいくつかご紹介します。

~ウォールナットの話~
ウォールナットとは,その優れた木質、美しさから「チーク」、「マホガニー」と並んで世界三大銘木のひとつとなっているクルミ科クルミ属の落葉広葉樹です。
日本では“クルミ”、古代ギリシャ語では”カリュオン”と呼ばれて、頭脳を意味する”カリ”から木言葉は「知性」です。クルミの実は、古代ギリシャやアメリカでは結婚式の時に長寿・豊饒・多産の象徴として配ったり、子孫繁栄の意味を込めて撒いたりする習慣があるそうです。それは、栄養価が高く健康美容効果が期待できるクルミの実が、一本の木から年間50キロも摂れるほどに豊かに実ることからの伝承なのでしょう。

~アッシュの話~
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アッシュとは、アメリカトネリコとも呼ばれるモクセイ科トネリコ属の落葉広葉樹です。
北欧神話に出てくる、9つの世界を内包する巨木の世界樹・ユグドラシルは、同じトネリコ属のセイヨウトネリコのことです。成長が早くほとんど枯れることが無く、「神聖の木」、「生命の木」、「知恵と意識と生命の木」、「運命と空間と時間の木」とも言われています。古代ではトネリコは邪眼、不和、蛇の毒牙の魔よけであり、蛇はその「神聖な木」の影さえも脅えたという話もあります。他にも魔法使いは、トネリコの木の近くに住み、魔法のほうきもトネリコで出来ていたとか。
~センダンの話~
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センダンは古名をオオチ、アウチと呼ばれ、日本では関東以西の暖地に分布するセンダン科センダン属の落葉高木です。
8世紀初頭の歌人、山上憶良(やまのうえのおくら)の歌には「 妹が見し”あふち”の花は散りぬべし わが泣く涙いまだ干なくに 」とあります。清少納言の「枕草子」の中にも「木のさまにくげなれど楝(あふち)の花いとをかし。」とあります。
このように、あふち(センダン)は現在でもいろんな自治体の樹に指定されているように、古来より薄紫色の花の美しさを楽しみ、実や樹皮は生薬に利用されるなど日本にたいへん馴染み深い樹です。
初夏に咲く薄紫の花を楽しみ、秋に黄色く熟した実を採取し、果肉部を陽乾してひび、しもやけ等に使用したりする苦棟子(くれんし)という生薬とし、樹皮表面のコルク質を取り除いて細かく刻み、陽乾して煎じて、虫下しに服用する苦棟皮(くれんぴ)という生薬にして利用していたのでしょう。
また、2007年にセンダン抽出液がインフルエンザウィルスを除去する効果が証明され、すでに製品化されています。
インドではこの木に「邪気を払う力」があると信じられているように、日本に昔からある国産材「センダン」は、実や樹皮は生薬になり、抽出液からもウィルス除去製品が作られるほどに「健康」のために役立っている樹木です。
~ポプラの話~
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ポプラは、双子葉植物綱キントラノオ目ヤナギ科ヤマナラシ属またはハコヤナギ属 の落葉広葉樹です。
学名の Populusは、ポプラの葉が僅かな風でも揺れ動くことから、ギリシャ語のpappalein、つまり「動く」という言葉から来ているとも、、人々がこの木の下に集まり、集会を開いたことから「民衆」「人々」を意味するラテン語「populus」に由来しているともいわれています。
また、ギリシャ神話の中には、「太陽神ヘリオス(アポロン)とニンフ・クリュメネーの子であるパエトーンの死を嘆き悲しんだ姉妹たちは、ポプラの木となり、その涙は琥珀となった」という伝説があります。
そのようなことから「繊細、敏感・思いやり、愛」を意味する樹とも言われています。他にも、 ポプラはまっすぐ伸びた幹から枝を天に向かってほうき状に伸ばすその姿から「成功・勝利」を意味するとも言われています。

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